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特集

montbell X パドルスポーツ・ライフスタイル・マガジン「漕遊(SOUYU)」

タイトル

悠久の場所で、アウトドアを存分に楽しむ

ー 三重県・紀北町 ー

 

漕遊 No.2(2017年6月10日発行 /  発行元:MIX Publishing)

 

歴史が流れる世界遺産(熊野古道)のある東紀州・紀北町。


世界遺産熊野古道が通る、三重県北牟婁郡(きたむろぐん)紀北町が今回のフィールド。三重県を五つに区分したうちの東紀州地域に属し(他は北勢、伊賀、中勢、南勢)、古くから「南紀」「熊野」とも呼ばれ、気象情報では「紀勢・東紀州」として区分されているところです。
 

世界遺産熊野古道

 

上古には、和歌山県南部と三重県南部からなる熊野国があったとされており、その後、紀伊国になり、江戸期には紀州藩に属し、明治になって度会県、ついで三重県となる。中心都市は尾鷲で、尾鷲ヒノキに代表される林業が盛んな雨の多い地域ですが、天然の良港が発達し漁業も盛んです。また、熊野三山(田辺市の熊野本宮大社・新宮市の熊野速玉大社・那智勝浦町の熊野那智大社)を中心とする熊野信仰の地としても知られている。三重県というと伊勢神宮を想起しがちですが、伊勢神宮の影響を色濃く受けるエリアとは趣を異にし、三重県南部・東紀州には違った信仰が息づいているのを感じる。熊野信仰というのは、神道の原点である自然神信仰と祖先神信仰、修験道、仏教、その神仏習合発祥の地である熊野に対する信仰で、鬱蒼とした大自然の中に神と仏が共存していたと考えられていました。熊野詣は平安時代末期に大流行し、その後、武士や庶民も参詣する様になり「蟻の熊野詣」と盛況振りが表現されるほど。また熊野の御師 (おし) や山伏が、熊野牛王符(護符として、また起請文[誓約書]の紙として使われ、牛王符に書いた誓約を破ると神罰を受けると信じられた)を配布し、魔よけの信仰を広めました。熊野権現は日本全国に勧請されて各地に熊野神社が建てられたそうです。中でも沖縄では、神社の殆どが熊野権現を祀っているそうです。 しかし、世界遺産があるとはいえ、一般的にはこの地域はそれほど馴染みがある・・・全国的に知れ渡ったメジャーな観光地ではないかもしれません。けれども手つかずの海・川・山があるこの地は、アウトドア・フリーク、特にシーカヤックやSUPなど漕ぐ人にとっては確実に心躍る場所。取材前に、事前のリサーチをしていた漕遊編集部もそんな気持ちになりました。

 

海、川、山があり、
カヤック、キャンプ、釣り、トレッキングなど多種多様なスタイルで遊ぶ。


紀勢自動車道を三重県南部へ向かい南下すると(今回の取材時は、関東方面から車で向かう)幾つものトンネルを抜けていきます。そのトンネルの多さから周辺の入り組んだ地形が想起できます。
 

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海山インターチェンジを降りると、目的地である紀北町に到着。背後の西北部を日本有数の原生林が残る大台山系に囲まれた自然豊かな町。かつて熊野街道と呼ばれた国道四十二号線が通っていますが、鉄道が通り駅ができたのはが昭和になってからで、熊野灘に面してリアス式の入り組んだ地形が続くこの町へは、長い間、海からのアクセスが主であったといいます(エンジン付きの船の以前は、みんな漕いでいたのでしょう)。だからこそ秘境とも表現され、今でも手つかずの自然が残っているのです。今回ガイドをお願いした森田さんは、かつてカヤックで日本一周の旅をしたことがある経験の持ち主で、この紀北町の小山浦集落でシーカヤックステーション小山ハウスを営み、周辺で行うことができるアウトドア・アクティビティのガイドと会員制の宿泊施設の管理をしています。

 

小山ハウスの森田さん

 

この場所は、コンビニはもちろん、自動販売機も無い静かな集落ですが、今や高速道路が整備されたことで名古屋から二時間、大阪からでも二時間半ほどで遊びに来ることができる。さらに三重交通の高速バスステーションが開業したおかげで、高速バスを利用し、名古屋はもちろん、東京や神奈川など関東からでもこの場所に自然を堪能しに来ることができる様になりました。自分の車に漕ぐギアとキャンプ用品を積んで来ることもできるし、組み立て式のフォールディングカヤックやインフレータブルSUPを持ってバスに乗って来ることもできる・・・。ライフスタイルに合わせた楽しみ方ができ、旅も満喫できる東紀州・紀北町は、アウトドア・フリークにとって聖地ともいえる場所になりそうです。ここからのカヤックなどの出艇や、周辺でのキャンプには幾つか注意点があります。訪れる前に、情報収集や注意点の把握なども含めて、シーカヤックステーション小山ハウスの森田さんに連絡をしてみましょう(TEL:080-4120-0480)。

 

旅の前、出艇前にすること。事前の準備。


ここで、旅の前、出艇前にすること、事前の準備について話をしましょう。例えば、漕遊編集部は、今回の東紀州・紀北町での漕ぐ旅のテーマをカヤックフィッシングと上陸した浜でのランチをメインに想定。そこで事前に必要な道具はリストアップし、車に積み込む際に確認するなどをして準備をしました。家の近所で漕ぐのであれば忘れ物をしてもすぐに取りに行けますが、旅に出る場合は忘れ物をするとそれが重大なミス(最悪、漕げなくなったり)に繋がることに。出発前(これは家を出る時も、出艇する前にも同じことが言えますが)の準備は早めに、念入りにが基本です。
 

カヤック装備

 
 

前の日にやっておくのはもちろん、出艇前も十分時間に余裕を持ち再度確認すると良いと思います。また、天気やコンディションも考えて、濡れてはいけないモノはなるべくコンパクトにし防水バッグに入れる(タープのポールなど長尺なモノもあるので何種類かサイズの違う防水バッグを揃えると便利)。また、同じタイミングで使うモノは極力同じバッグにパッキングしておくと荷物全てを引っ張り出すこともなくスムースです。忘れっぽい人は、防水バッグに収納した中身を携帯で写真に撮っておくといいかもしれません。
 

パッキング

 
 

また、今回の様に釣りを目的とする場合は、洋上で、カヤックを漕いだり、釣りをしたり、コンディション(風や潮)の見極めなど色々とすることが多いので、できる限り事前に準備をしていくことが大事になります。釣るターゲットが明確ならルアーなどの仕掛けやリーダーなどを多めにセットし、予備で必要なモノなど(交換スプールなど)も準備しておきましょう。

 

 

カヤック出航前

 

これは普段から定期的に確認すべきことですが、カヤックのデッキやボトムなど船体部分、今回使用した様な足漕ぎカヤックの場合はペダルやプロペラなどの駆動部分が正常に動くかどうか、ラダーはきちんと動くかどうかなど、動作確認も忘れずにおこなってから出艇しましょう。旅に行く前、漕ぐ前の準備の時間も、道具好きにとっては、漕いだりキャンプするのと同じくらい楽しい時間ですよね!

 

銚子川河口、右手の浜から出発。


森田さんのガイドでカヤックフィッシングに出発。この日は、コンディションを考慮し銚子川河口の右手にある浜から出艇しました。この様に風や潮の流れなどその日のコンディションによって出艇し易い場所、し難い場所があるので、森田さんなど地元のガイドの人からの情報はとても大事になります。また、何かあった時に手助けしてくれるのも地元の方たちです。
 

銚子川河口の浜から出発

 

事前に連絡が必要というのは、その場所で漕ぐ許可以上に、地元の人たちとのコミュニケーションにより、安全に楽しく漕げることを意味します。 当日、森田さんが使用したカヤックは、釣りにはもってこいの足漕ぎ式カヤック(パーセプション ペスカドール パイロット 12.0)で、これはフィッシング用にさまざまな工夫が施されており、足漕ぎでプロペラを回転させるタイプで、後退も可能なので、潮の流れや風にも対応し易く釣りには最適なカヤック。森田さんの後ろをフォローしながら尾鷲湾に漕ぎだすと、黒潮が入り込む熊野の海の色は深く青く、景色の緑も色濃く感じられます。やがて暗く穴を開ける洞窟が連続して現れ、岩肌から湧き出でる水流や滝など、迫力があり力溢れる風景が迫ってきます。原始的というか、悠久な大自然の力強さを感じさせられるのが、このエリアの自然なのかもしれません。森田さんはそんな見どころを案内をしながら、プロペラ式の足漕ぎカヤックでスイスイと進んでいきます。大自然とカヤックのコントラストが見事にマッチし、一つの風景、絵になっている・・・そんな不思議な感覚にとらわれ、一瞬、漕ぐのも忘れて見入ってしまいました。

 

ペスカドールパイロット フィッシング

今回、この旅のメインの遊びにしたフィッシングのポイントは、岸(出艇した場所)から数キロ先にある沖合に浮かぶ島の付近でしたが、ここまで漕いで来ると、ずっと洞窟の続く断崖の先端を超え、このエリアの中心都市・尾鷲の街並みが右手遙かに見えます。高さが二百メートル以上もあるという尾鷲のランドマーク三田火力発電所の煙突もぼんやりと霞んで見えていました。左の対岸には島勝半島のコーストラインが見えます。ここはまさに潮通りの良い場所で、こんな場所まで漕いできて釣りをすることができるのがカヤックフィッシングの醍醐味。足漕ぎしながら、時折、サイドにあるレバーでラダーを操作してポイントをキープしながら自由自在にロッドとリールを操っている森田さんを横目で見つつ、「足漕ぎカヤックも良いな・・・」と昨年購入したフォールディングカヤックを漕ぎながら密かに考える・・・(手はパドルと釣り竿を忙しなく持ち替えながら)。漕ぐ遊び、アウトドアでの遊びは、ギアへの探究心、興味も最大の楽しみであり、欲求との戦いでもあるワケです。しばらくすると陸からの風がどんどん強くなってきたので森田さんの判断で上陸することに。森田さんは地魚をキャッチ(&リリース)し、私はアタリがないままでしたが、ランチをする予定地に上陸。

 

火を起こしての料理と、 文明から生まれた食事の融合…


上陸後は、すぐにタープを張ってベースを作ります。晴れているのにパラパラと風に乗った雨粒を感じ、風もますます強くなってきたので、それらを考慮してタープをセット、ここは玉石の浜で、ペグ打ちはできないので、ロープは大きめの石を使って固定。
 

カヤックキャンプ

 

これで一安心、次に流木を集め、食事の準備に取り掛かりました。地元の白石湖で養殖されている名産の渡利牡蠣と、持参していたフリーズドライ食品「リゾッタ」で浜ランチをとる。ジェットボイルで湯を沸かし、リゾッタを開封しパックにお湯を注ぐ。商品自体が軽いのと、パッケージを持ってそのまま食べられるから食器を持たずに済むので荷物が減るのが最大の利点。しかも美味しい! 森田さんは流木を集めて焚き火台で火を起こし、持ってきた牡蠣を焼きはじめる。火を起こしての料理と、文明から生まれた食事の融合・・・時代の流れと、リンクを感じさせる、こんなランチもおすすめです。これこそ、現代のアウトドアの楽しみ方なのかもしれません。

 

リゾッタリゾッタ調理

 

清流・銚子川の河口で遊ぶ。それから上流のキャンプ場へ。


翌日は、強くなった風の中でも漕げる銚子川の河口へ。河口域に入ると風裏になったのか穏やかなコンディションになり、この場所特有の「ゆらゆら帯(国道四十二号線の橋の下を通過してから川が海に注ぎ込む辺りは、真水と海水が混じりあう汽水域と呼ばれるところで、水がゆらゆらとゆれて見える独特の現象が起きる)」と呼ばれる現象を見ることができました。海も川も河口部まで透明でキレイだからこそ発生する、全国的にも珍しい現象だそうです。
 

銚子川河口で遊ぶ

 

どうして銚子川は日本有数の透明度といわれているのか? それは大台ケ原という年間降水量が多く標高の高い場所を源とし、約20キロを一気に下りながら山間部を流れてすぐに海に注がれるからだそうです。例えば今回の旅の様にカヤックで釣りをするという目的はあったとしても、その場所にある特有の自然も漕いで体験することも大切なことですし、地元の人とコミュニケーションを取っていないと知らないまま終わってしまうことでもありますね。その後、家族連れ、特に子どもたちに良い経験をさせることができる場所があるということで、銚子川上流にあるキャンプ場「キャンプinn海山(みやま)」を見学に。そこでは、カナディアンカヌーがまるで空を飛んでいる様に見えるほどの透明な水があり、アマゴやハゼ、ウグイなど多くの魚や生き物を観察したり、さまざまなアクティビティや豊かな自然を楽しむことができます。まさに紀北町周辺を楽しむためのベースとしても最適な場所であり、アウトドアを満喫できる・・・そんな風に表現できる場所です。

 

キャンプサイト清流・銚子川


僕らも、しばし森の静寂に身を委ね、ゆったりとした時を過ごせました。今回はここで宿泊しませんでしたが、次の訪問時には必ずステイしたいと思わせてくれたところです。代わりに、その夜は森田さんが営む会員制の宿泊施設におじゃまし、色々な話しに花が咲きました。

 

世界遺産・熊野古道を体感。地面を漕ぐつもりでトレッキングをする。


世界遺産・熊野古道は正式には、「紀伊山地の霊場と参詣道」(Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range)であり、伊勢路、花の窟(はなのいわや)は登録資産目録に掲載されている場所。
 

熊野古道 トレッキング


たまには地面を漕ぐつもりでトレッキングをするのもいかがでしょうか。世界遺産・熊野古道の伊勢路(いせじ)は、伊勢国・伊勢神宮から、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へ通じる参詣道で、今に残る石畳は時代劇で有名な「暴れん坊将軍」で知られる徳川八代将軍、徳川吉宗が整備したものと言われています。最寄りの道の駅海山(みちのえき みやま)に車を駐め、馬越峠(まごせとうげ)からトレッキングに出発すると、苔むした石畳が続く古道は、桧の美林とシダに囲まれた石畳が約二キロにわたり良好に保存されており、ここから天狗倉山頂まで足を伸ばせば、視界が良好な日なら熊野灘の絶景が見渡せるといいます。そこから車で移動すれば、同じ日に、東紀州・熊野市にある花の窟神社(はなのいわやじんじゃ)にも行くことが可能。ここは日本最古の神社で御神体は巨大な磐座。『日本書紀』の神代記で、神産みの段の第五の一書に、伊弉冉尊が死んだとき熊野の有馬村(三重県熊野市有馬の花窟神社)というところに葬られたという記述があります。この高さ約四十五メートルの御神体は熊野灘に面しそそり立っていて、はるか昔に海を漕いで渡ってきた人は、その威容に息を飲んだかもしれません。

 

 

観光スポット、遊び場所も豊富な紀北町。


紀北町には、観光スポットや遊び場所がまだまだ沢山あります。森田さんがカヤックフィッシングの時に持ってきてくれた牡蠣の産地である白石湖(周囲が約四〜五キロの汽水湖。渡利牡蛎の産地として知られている)では名物の渡利牡蠣の養殖を見学することが可能。山々に降った雨が太平洋の黒潮が混じり合う白石湖に流れ込み、滋味豊かな牡蠣を育てるといいます。確かに食べた牡蠣は絶品で、通信販売で購入することも可能だそうです。そこから島勝半島を走ると、幾つもの入江、湾があり、パドルスポーツをしたらいかにも楽しそうなロケーションが幾つも現れてきます。ある入江ではきれいな海を活用したアオサの栽培がされていた。シーズンにはメインの海水浴場となるという和具の浜は、日本とは思えない色の景色が広がる美しいビーチでした。
 

和具の浜白石湖


ここはサイクリングで周遊しても楽しいルートです。美しい海、清冽な川、世界遺産・熊野古道と多くの魅力を持つこのエリアは、色々なことを楽しみたいと考えるアウトドア・フリークには最高の場所です。

 

紀北 自転車

 

「漕遊」について
 

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パドルスポーツ・アウトドア・ライフスタイル・マガジン「漕遊」

2016年に創刊した「漕ぐ遊びとキャンプをリンクさせてアウトドアライフを楽しむ」をコンセプトとして年刊誌。

アウトドアで漕ぐスポーツやキャンプをするのが好きな読者の皆さんが、遊びに出かけた1日、ないしは数日間を楽しむテーマどのものです。編集部も大好きなテーマで、取材という仕事にすり替えて誰よりもそれを楽しんで作られている。

 

漕遊最新号

「漕遊」No.2 2017(最新号)


「PADDLE SPORTS + CAMP = WONDERFUL OUTDOOR LIFE」という方程式ができあがる。

ただしこの方程式は、数学ではないので答えは一つではありません。その人がどんなパドルスポーツをやるのか、どんなキャンプをするのか、どんなメンバーなのか、楽しみ方次第で答えは変わり、また、無限のパターンがあるのです。

 

愛車に荷物を詰め込んで、持てる荷物を担いで……ゲレンデまでの行き方も人それぞれですが、漕ぐ遊びとキャンプをリンクさせてアウトドア・ライフを楽しみましょう!


全国のモンベルストア、書店にて販売中です。

 

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